2004年11月20日土曜日

サステイナブルな生き方へ       代表 永田佳之

 ここ数年、「持続可能な開発」 という言葉を新聞や雑誌で目にするようになりました。「持続可能(サステイナブル)」 などというと、難しく聞こえますが、より大きな方へより速い方へと成長し続けるような社会のあり方を見直し、自国ばかりでなく地球社会全体のことも、そして現代に生きる自分たちだけでなく次世代のことも考えて、みんなが安心して生きていけるような世の中にしよう、ということだと勝手に解釈しています。
 ところで2000年のヨハネスブルグ・サミット(世界首脳会議)では、日本政府が同サミットの公文書
に盛り込むように提案した「持続可能な開発のための教育の10年」が承認されました。学校教育や社会教育などを通じて持続可能な社会づくりにNPOが積極的に参加することなどを目指すプログラムがいよいよ来年からスタートします。
 上記のサミットの宣言では、環境・開発・人権・平和・ジェンダー・多文化共生などの分野での各国の努力が求められることが謳われています。これらの分野を考えると、日本のNPOの活動の多くが国際的な潮流の中に位置づけられるといえましょう。貧困やジェンダー、環境、人権にかかわる私たちの 「学び舎づくりの会」 もそうした団体の一つであり、ボリビアと日本をつなぐという想いのもとで細々と始められた活動もいつの間にか時代の大きな潮流の中にあることに気づかされます。
 さて、「学び舎づくりの会」 が生まれて6年になろうとしています。怖いもの知らずの勢いで進んでいった1~2棟目、よりニーズの高い地域へとチャレンジしていった3~4棟目を経て、私たちの会もよりよく 「持続」 するために、ここいらへんで立ち止まって考えようということになりました。あえて 「勢い」 にブレーキをかけ、学び舎を造る時間とエネルギーを、目下これまでの活動をふり返るために使っています。
 私たちのこれまでの活動は理想と現実との狭間で揺れた軌跡の上にあります。その軌跡をふり返りながら、当初から標榜してきた 「自然素材」 や 「住民参加」 へのこだわりをはたしてどれだけ現実のものにしてきたのか、学び舎はどれだけ住民のニーズに応えているのか、会の運営は開かれたものになっているのか・・・などと口角泡を飛ばしながら定例会で話し合っています。
 そこでこの度の通信(注 ニュースレター10号)は 〈ふり返り特集〉 とさせていただきました。これまでのすべての学び舎を建築の観点から、また住民参加などの学び舎建設プロセスの視点からふり返ります。この評価とモニタリングの作業は、11月から高橋慎一郎会員が現地調査のために長期滞在する後も続きますので、今回は、中間の報告として受け留めていただければ幸いです。
 実は、ここ数ヵ月間、ふり返りの作業をくり返していたら、ひょんな問いにぶつかってしまいました。それは、はたして自分たち自身の活動のあり方はサステイナブルなのかという問いです。NPO後発国とも言われる日本では、「持続可能な開発」 を掲げて活動している団体の運営体制そのものがサステイナブルではなく、息切れしそうなNPOも多いのではないでしょうか。少なくとも 「学び舎づくりの会」 は、気持ちばかりが先立ち、常にマンパワーと資金の不足に直面しながらも 「持続」 してきたことも代えがたい事実です。 「持続可能」 を標榜する前に、まずは自らがそういう生き方をしているのか、自問してみることも大切なのかもしれません。
(初出・ニュースレター「学び舎」10号巻頭言)