2004年11月15日月曜日

建築部会から 1棟目から4棟目をふりかえって       建築部会 福峯 衆宝

 「学びたいけど学ぶ場所が無い」のメッセージが地球の反対側ボリビアから届いた。写真で見る限りでは青空教室で、暑いときは木陰に、風の冷たいときには建物の陰に隠れ、とても大変そうだ。現地のインディへナ(先住民)の人々は公用語のスペイン語が読み書きできない人々が大勢いて、そのために就職にも就けず、役所に生活の要請をしようにも字が書けない(読めない)ばかりに、相手にもされないでいる。どうにか力になれないのか?
 ボリビアの国がどんな国かあまり良く知らないが、それでは造ろうか?
 つくれるのかなー?どうでもいいから造ろう!
 そんな感じの人達が集まったのが、学び舎づくりの会の始まりでした。

 「学び舎が造れること」に半信半疑で、手探りで初めて、もう4棟も作ることが出来ました。いやまだ4棟なのかもしれないが、造れば造るほど問題も、悩みも増える、それでも何故か活動をしている学び舎づくりの会です。
 初めの1棟は現地状況をあまり知らずに、設計家の薩田英男氏中心に、建築の図面を書き始めましたが、どの様な素材が現地には有るのか?
 調べてわかった事は南米には古くから日干し煉瓦の 「土の家がある」。現地にはユーカリの木が有り、伐採しても株から新たに数本生え出し、生命力の旺盛な木である。土の家があるなら、日干し煉瓦の技術に日本の左官技術を加えて、より強くて丈夫なものを造れないか?現地の人達が土の建物を敬遠するのは 「ビンチュウカ」 という虫が土壁に生息し風土病を発生させているからだとの情報を知り、土に石灰を入れることを考え、会のメンバーで左官の横山氏を派遣しボリビアで土の調査、ワークショップ開催をしながら学び舎造りに突入。
 現地素材の、土、ユーカリ丸太、素焼きのスペイン瓦と基礎は現地の法律で決められたコンクリート(無筋)、日干し煉瓦の壁積の上部には屋根と壁を支える鉄筋コンクリートの架梁を設ける。施工は現地の住民参加で日本人がポイント、ポイントでボリビアに行き、支援し建てると方針を決めた。
 建て始めると問題が出て来る、出て来る。初代会長薩田氏は、お陰で何度も太平洋を行ったり来たり。何も無いとは良い事かもしれないが、お金も無い、時間も無い、物の無い経験も無い、日本では簡単に土に石灰を入れることが出来るが、土に石灰を入れて水を混ぜると発熱する、その対策の機械が無い、ゴム手袋も、ゴム長を買うことも出来ない。住民が火傷することになる。
 結局は安全重視で石灰投入は中止、しかし内部の壁はビンチュウカ対策で石灰塗り仕上げにして完成、ところが、予算の関係で床の仕上げをタイルにするか、予算に合わせた安いセメント床にするか、で大揉め、ボリビアに、学ぶ場所を造る為に、汗をかいて、大声も上げて議論を戦わせて、何度も飛行機を乗り継ぎ、風呂に入るのを忘れるほど働き、帰国途中の機上で目覚めたら周囲の座席がガラガラ、スチワーデスが消臭スプレーを抱えダッシュ!思い切り足と靴下にシャワースプレーされた。そんな思い出もなんのその、それでも学び舎は完成するんです。
 2棟目も同じ設計、デザインで学び舎は造られましたが、1棟目の欠点、問題点も改良しました。施工面では、長期滞在の高橋慎一郎君が現場管理者として常駐、現地人よりも現地人らしい?佐藤隆さんがそれこそ何度もボリビアに渡航し、重要な場面では現場所長、職長、大工、瓦職人、左官、食長?兼飲み隊長までこなし、質の高い学び舎を完成させることができました。
 楕円形の建物、墨出し、角度出し、コンクリート型枠、配筋、ユーカリ丸太の小屋組み、瓦の割付、棟の納まり、1棟目で現地の職人と住民だけで造った学び舎には無い制度のよさが光っています。
 3、4棟目の学び舎は、「学び舎は本当に必要なところに建てるべきだ」 との結論にいたり、1、2棟目の都市近郊地域とは別の2800m~3000mの高地で、とても不便な村に建てることになりました。建築の部材を減らすために、ユーカリの丸太は搬送量と重量であきらめ、小屋梁は鉄筋のラチス梁(3角断面)にし、形は楕円の2重壁を、1重の日干し煉瓦積の長方形、基礎は無筋コンクリート、柱と梁は鉄筋コンクリート、屋根は瓦をやめて、トタン葺きの上に(現地の高地に生える)草葺き、柱型は石の小口積に仕上げました。徹底して部材を減らし現場で時間のかかる屋根組を現地の加治屋さんの手を借りて素早く建てることにしました。
 4棟目は3棟目の反省点を入れ、現地の要望も取り入れ、教員の宿泊スペースを設けました。長期滞在者が落合裕梨さんに決まり、施工体制を見直し現場管理が出来るボリビア人の専門家を雇い現場を進め彼女のパワフルな行動力で、ハリケーンを呼び、すごい勢いで工事を進め、毅然と学び舎が竣工しました。
 ここまで2棟ずつ、違うタイプの学び舎を造って来ましたが、それぞれの形にはそれなりの理由があって学び舎は造られました。それぞれが立派な学び舎である事は間違いないと自画自賛しています。しかし学び舎造りは、これからが本番だと考えています。学びたいけど学ぶ場所が無いところはまだたくさん有ります。数多く造れば良いという問題でないのかもしれませんが、持続は力といいます、どうか日本の皆さんの温かい思いとともに 「学び舎づくりの会」 をご支援くださいますようお願いいたします。また、これまで支援、応援してくださいました皆様、お陰様で4棟目まで出来ました。心より、御礼申し上げます。
 我々の学び舎は、ボリビアの皆さんに使われて、かわいがられて、大切にされて初めて 「学び舎」 になるのだと思います。
 学び舎づくりの会は、日本の反対側にあるボリビアに、小さな4つの足跡をつけましたが、それがボリビアの皆さんと日本の道しるべになれば幸いです。