背中に社会を切り拓く決意と労働者の風格をにじませ、躍動感に満ちた小柄な体躯は相変わらずでした。野原さんがエルパソ郊外に購入した約1500坪の土地は、購入時にはなかった地中浸透式の大規模下水槽の計画があることがわかり、500万円を費やして、整地し井戸を掘り、日干しレンガを1500個も造り、着々と準備を進めていた「聖マルティンの家」は振り出しに戻ってしまったとの事でした。
土地探しは現在、市有地を恒久的に借りる交渉をしており、12月22日の佐藤隆氏の報告によればサンタクロースは健在とのことです。(これまでも引越しを余儀なくされて、またボリビア社会の実際を鑑みれば、ホッとするには早いようですが・・・。)
購入した土地の利用について野原さんは、次の様な構想を抱き、既に実行に移しています。三分の一をオレンジ、ブドウ、レモン、スモモ、ナシなどの果樹園にしようと、植樹のために90本分の土を掘り返し、苗木を植えつけるだけになっているそうで、他に野菜作り、ニワトリやウサギなどを飼育し、寝泊りできる小屋を造って、障がいをもった彼女/彼らと共に身体を動かし、一つの喜びをわかち合える場にしたいとのことでした。横浜にも自前の畑を持ち農作業をしている作業所や面白半分も手伝って障がいをもった人も含めて寄ってたかって2畝(せ)の田圃を作っているグループもあり、関係が湧いて来る場の力は共感できますし、よくわかる思いです。
運営資金の現状は以下の様です。エルパソでの「聖マルティンの家」の借家代は月150ドル、10人いる職員の給与が月1200ドル、利用料もジャガイモやチューニョ、豆など物でしか払えないメンバーの生活費(1名のみ月10ドルを払っているそうで)、電気・水道料などを含めた1月の維持費は3000~3500ドル。ほとんどが野原さんの双肩にかかっています。
「欲を言えばキリがないのですが・・・」と言いながら、借家住まいの「聖マルティンの家」の現状を説明します。庭は広くて利用がいはあるが、部屋は3つしかなく、食堂もキッチンも狭く、十分なケアができない。車イスもあったらうれしいと。そして門をたたく人たちとドアを開け目を合わせてしまうとどうぞと中に招き入れざるをえないのです、と緊張をくずした顔になります。
決して無理をしなく、各々ができることをできる形をもって支えていくゆるやかなネットワークで野原さんを包んでいかなければと強く思いました。
日本では私たちの他、主にNPO法人エルピス会が「聖マルティンの家」を支えています。
(学び舎づくりの会 M いとう)