山あい急な斜面中のわずかの平らな部分が耕され、数軒の家での集落がたまに見られます。時折道ばたに放牧中の羊の群れに出会います。牧羊犬がけたたましく体全体で騒ぎます。道は山肌を廻り昇り降り、谷を越え、2時間程すると川を徒渉した先に小さな集落に出会います(TACOPAYA)。ちょうど学校が終わった時間であり集落の中のほぼ1本しかない道を小さな子ども達が大急ぎで駆け抜け、しかし私達の後になり先になり好奇心をむき出しにして来ます。ひょいとこちらから挨拶をすると、丸い大きな目と顔全体の笑顔に変わり、同時に体全体で恥ずかしさを表現するのです。陽は頭の上に昇り、家々の壁の陰翳が際立つ静かな昼のことでした。
さて、道路はさらに山を越え高原地帯(アルティプラーノ)に入り込みます。高度4000m前後の荒涼とした台地が際限なく続くのです。1時間程で道は小さな高台の集落に入ってゆきます(BOLIVAR)。ここでは成人教育のための教師育成セミナーを見学しました。周囲の集落からの教育代表者が数十人、真摯なまなざしで相手の言うことを聞き、喋り、学ぶ場です。彼等彼女等は近い集落でも徒歩2時間、遠い所は5時間をかけて集まってくるのです。さてセミナーも終わり帰路に着くに当たって腹ごしらえを共にしました。山と盛った皿の食べ物を、腹ごしらえ、の言葉通り彼等はワシワシ食します。こちらもポンと膝を叩き、喰うことはこれだ!!! と全身で表現しつつ食します。大鍋の中の料理はあっという間に無くなるでしょう。腹がくちくなる頃、まばらに生えている丈の短い草の影が高原に絵模様を描き始めます。陽もすでに傾き、彼等彼女等は道を歩き始めました。
ここでは、人や物の周りにあるのは山と空気だけです。人や物は地から突出し、いやが応でもあざやかに目に飛び込んできます。感傷でしかないのですが、ある程度の人口が集中し経済の潤いを受けつつあるコチャバンバ盆地の内を「安全な巣」と例えると、この山の上では、常に人々は生きることへの挑戦を続けている、とさえ感じられてしまうのです。(住んでいる方々は、まったくそうは思ってないでしょうが)
今回はARQUE県TACOPAYA市、BOLIVAR県BOLIVAR市(それぞれの県都)、を訪ねました。それぞれ市街の人口200~400人程度の集落でしかありません。
TACOPAYAは大きな谷あいの川に沿った街。BOLIVARはアルティプラーノ中の僅かの高台にある街です。いずれかの機会に、よりもっと詳しく紹介したい所ではあります。
(副代表 伊藤有樹)