ティティカカ湖は、ボリビアの首都ラパスからバンで西に2時間近くのところにある。
道中、エル・アルトから続く平原はまるで地平線のようで、そこが富士山よりも高い場所だということを忘れてしまいそうになる。その日は快晴で、空の青と雲の白、平原の緑、茶色のコントラストが美しい。まばらに建つこじんまりとした土づくりの民家や家畜。ひもにつながれることも囲われることもない牛やロバたちは、なんだかゆったりと見えた。
しばらくすると、水なんか縁遠そうな風景に、突如きらきらとした水面があらわれる。ティティカカ湖である。
ペルーとの国境、標高3890メートルの高地に広がる湖はどこまでも続き、まるで海のようである。湖畔には葦船が漂い、湖面には空の青と雲がいっぱいに映る。ほとりには民家が続いており、葦舟や織物等のおみやげ、名物マス料理で人々は生計をたてている。この辺りは見晴らしもよく、ボリビアの保養地となっている。
ティティカカ湖畔の南側、標高3970メートルに世界遺産であるティワナク遺跡がある。ティワナク文化は紀元前200年にはじまり、600~1000年に最盛期を迎え、1200年頃までティティカカ湖畔一帯に影響を与え続けた。通訳さんの話では、ティワナクの人々は地下の神、地上の神、天上の神をあがめるためにピラミッドなどの神殿を創ったのだという。ティワナクのシンボルマークである十字に施された模様は太陽暦を表しており、人々は春分や夏至など暦に従って行事をおこなっていた。当時の文明がいかにすばらしいものであったか感服する。巨大な石で造られた神殿や像、石に彫られた精巧な模様、これらの見事な石造技術から、インカに影響を及ぼしたのはティワナク文化ではないかとも考えられている。遺跡は広大で、ピラミッドだけでも高さ15メートル、底辺210メートル四方の大きさで、全体を歩いてまわるだけでも1時間はかかるほどの広さである。新しく出来た博物館では、荘厳な雰囲気の中で貴重な石像やティワナク文化に触れることが出来る。博物館の外、赤茶の土と空の間にはためく原住民の色とりどりの旗をみていると、ボリビアが、自然と人間・文明のコントラストの強い国だということを改めて感じた。 (S・I)