7月5日、コチバケリーヤ村に3棟目の学び舎が落成しました。街からさほど遠くない地域で造られた1棟目および2棟目とは異なり、4千メートル近いアンデスの小村に建てられた3棟目が完成するまでの道のりはこれまでの学び舎建設にもまして険しかったといえます。
今ふり返ると、今回のプロジェクトを通して会の活動の根幹にかかわる決定がいくつかなされたように思われます。3棟目は従来と同じ手造りの学び舎ではありますが、プロジェクト全体として見た場合、少なくとも次の3点において1&2棟目とは決定的な違いを挙げることができます。
1つめは、日本人スタッフのかかわり方です。1&2棟目では要所で日本の専門家や見習いが現地に赴き、建設支援にあたってきましたが、3棟目では、当会の若人を中心に現地在住のメンバーが村の選定から建設まで一貫して取り組んできました。私たちの会が設立当初から大切にしようとしてきた「顔の見える支援」への大きな一歩でした。
2つめは、当地のユニセフ事務所と市役所と教育長との共同プロジェクトとしての位置づけです。実際に建設作業に従事する村と学び舎づくりの会のみならず、建設サイトの選定から建設後の識字教室運営そしてモニタリングに至るまで上記の3者もかかわる体制をとることにしました。こうした協働体制により、建設プロジェクトのみならず、長期にわたる教育プログラムとしての安定性がより増したといえましょう。
3つめは、建築の素材や構造です。アンデス高地での作業において効率性や安全性を重視し、村民が参加しやすいプロジェクトにするためにも3棟目は学び舎の形状をよりシンプルにし、自然素材との係わり方も再考することになりました。その結果、これまでの楕円の学び舎ではなく四角い形の学び舎となり、素材も自然素材のみならず加工素材までをも組み合わせる手法がとられています。
上のような変更に伴い、新たな課題もでてきました。現地に常駐のメンバーをおくことにより、たしかに「顔の見える支援」はより実現されたともいえますが、同時に、常駐メンバーには複数の参加者(団体)とフェアな関係を結び、その時その場に応じた調整タスクを切り盛りすることが期待されるようになりました。また、学び舎づくりに係わる団体が多様化することにより、当然ながらプロジェクトの構造が複雑化してきます。これは契約内容にも影響する重要な変更点です。さらに、自然環境の重視と利便性を追及した加工素材の積極的な使用という、ともすれば二項対立的な課題に対して、今回の学び舎の形状や素材の変更がどのように立ち現われ、そこから生まれる新たな課題に私たちはいかに向き合っていくのかが問われています。
即効性や効率・効果が求められる時代ではありますが、これらの問いに対して私としては即答は避けたいと考えています。上の1点目については、今、ふり返りつつ4棟目の建設の可能性を探っているところですが、2点目は5年後に、3点目は10年から20年後くらいにふり返り、きちんと評価されるべき性質の課題なのかもしれません。一つひとつのテーマにじっくりと向き合いながら、まったりと歩んでゆく――そんな国際協力のあり方もあってもよいのではないかと思う昨今です。どうぞ末永いお付き合いをお願い致します。